2026年6月度KCG定例セミナー「『不合格』から始まった私のキャリア 〜マインドを変えた『出会い』と、人生の試練を乗りこなす『心の整え方』〜」 石川県信用保証協会/中小企業診断士会 広瀬隆之さん

2026年7月のKCG定例セミナーの講師は、石川県信用保証協会/中小企業診断士会の広瀬隆之(ひろせたかゆき)さんです。

広瀬さんは現在、石川県信用保証協会に勤務しながら、中小企業診断士としても精力的に活動しています。
広瀬さんの人生は、一見すると順風満帆のエリート街道を歩んできたように見えるかもしれません。
しかし、ご本人から語られたのは、想像を絶するような数々の「不合格」と過酷な道のり、そしてどん底で出会った人々への感謝の思いでした。
ご自身の弱さやトラウマ、病の経験までも赤裸々に、ユーモアを交えながら語る飾らない人柄は、参加者の心を強く惹きつけました。
熱気と温かさに包まれた定例セミナーの様子をレポートします。

 

地域経済の血液を循環させる「心臓」としての役割

広瀬さんが勤務する信用保証協会は、地域の中小企業の信用力を補完し、金融機関からの融資を円滑にする重要な役割を担っています。
ご自身の言葉を借りれば、まさに地域経済に血液を循環させる「心臓」のような存在。

広瀬さん自身もこれまでに保証や代位弁済、債権管理といった多岐にわたる業務を経験し、現場のエースとして活躍してきました。
さらには行政書士の資格も併せ持ち、確かな専門知識を武器に日々多くの経営者と向き合っています。

ご家庭では3人のお子さんのお父様でもあり、公私ともに充実した日々。周囲からは「なんでもこなすエリート」として見られることも多いそうです。
しかし、その輝かしいキャリアの裏側には、決して平坦ではない泥臭い挫折と再生の歴史が隠されていました。

 

消えない内気さと度重なる「不合格」、そして笑顔への誓い

広瀬さんの歩みは、はじめから順調だったわけではありません。
小・中学校時代は、常に自分に自信がなく、プレッシャーに弱い内気な少年だったと言います。
高校受験では大きな挫折を味わい自信を喪失。
大学受験でも結果は伴わず、大学では法律科目の単位を落とすなど、ご自身で「劣等生」と呼ぶような学生生活を送っていたそうです。

暗雲立ち込める日々の決定打となったのが、大学の卒業式での出来事でした。
直前に失恋し、卒業生たちからの冷たい視線を浴びるというトラウマに直面。
「このままの自分ではいけない」。
暗い過去と決別するため、広瀬さんは一つの大きな決心を胸に刻みます。

「何があっても笑顔を絶やさない。周りの人を幸せな気持ちにできる人間になる」

その誓いを胸に入社した最初の職場。
しかし「ニヤニヤするな!」と怒られ、仕事ができない新人として苦悩は深まります。
状況を打破したのは、圧倒的な実力を持つ上司との出会いでした。
1週間の仕事を30分で完遂する姿に憧れ、「責任感と主体性を持て」という教えを胸に猛勉強。
Excelやマクロのスキルを独学して業務を効率化し、やがて自信に満ちた「右腕」へと成長します。

しかし社会人4年目、友人に触発されて勢いで辞表を提出し、かつて目指した法律の道へ。
27歳で行政書士試験に合格するも、公的機関の面接で全て落とされるという新たな試練に見舞われます。
そんな時、石川県信用保証協会から声がかかり、現在へと繋がる扉が開かれたのです。

 

エースへの成長と、突然訪れた「原因不明の不調」という絶望

保証協会に入社した広瀬さんを待っていたのは、価値観を根底から覆す洗礼でした。
「定時が終わってからが自分の仕事」と考えていた広瀬さんに対し、新しい上司は「仕事は定時までの時間あたりの成果を最大化するものだ」と一喝。
この教えで仕事への向き合い方が激変し、わずかな期間で難易度の高い業務を次々とマスターして現場のトップランナーへ駆け上がります。

結婚し、子どもにも恵まれマイホームも新築。全てが順風満帆に進んでいるように見えました。

しかし35歳の時、突然の暗転が訪れます。目の前が真っ白になり、激しい動悸、めまい、吐き気が止まらなくなったのです。
常に船酔いしているような感覚に襲われ、病院に行っても原因不明。
頑張ろうとするほど苦しみが押し寄せ、今まで当たり前にできていたことが全くできなくなってしまいました。

「自分の人生はこれで終わりなのか」。
思考力を失い、かつてのエースは「何もできない人」になっていました。

絶望の中で、いつしか2年の歳月が経過。
休職を考えて弱音を吐いた時、奥様から「甘えるな。私は障害者の妻になったつもりはない」と厳しい言葉を投げかけられます。
当時はショックを受けたものの、その深い愛情と覚悟が込められた言葉は立ち上がるための大きな原動力となりました。

さらに広瀬さんを救い出したのは、11歳下の後輩の無言の優しさでした。
自分が抱えていた書類の山を、後輩が黙って処理してくれていたのです。

「本当は自分がサポートしなければならないのに」。
情けなさに打ちひしがれながらも、心に温かい感情が芽生えます。
「苦しい時は人に頼ってもいいんだ。情けないけれど今は甘えよう。
もし元に戻れたら、その時に恩返しをしよう」。

そう思えた日から確実に心が軽くなりました。
症状も徐々に改善し、数年後には未曾有の繁忙期が到来。
最前線で大量の案件を捌き切った事実が自信を完全に呼び戻し、広瀬さんは再びエースとしての復活を果たしたのです。

 

41歳からの新たな挑戦と、亡き母へ届けた最後の報告

自信を取り戻した広瀬さんは、41歳にして中小企業診断士という新たな難関資格に挑みます。
失われた年月を取り戻すかのような凄まじい執念で猛勉強を重ね、見事試験を突破。
しかし、診断士登録に必要な実務補習のため県外へ出発する直前、最愛の母ががん宣告を受けます。
広瀬さんは迷わず補習をキャンセルし、登録への道は白紙に戻ってしまいました。

ここで再び、人生を動かす運命的な「出会い」が訪れます。
合格同期の友人を通じ、診断士会から地元での実務補習を打診されたのです。

そこで出会ったのが、偶然にもがん患者に寄り添う事業を展開する経営者の方でした。
母の病状が悪化する中、広瀬さんはその事業の改善計画立案に奔走。
自らの境遇と重なるテーマに、魂を削るように向き合いました。

そして令和6年2月1日、ついに念願の中小企業診断士登録を果たします。
その翌日、広瀬さんは病床の母に登録証を手にして報告しました。
かすかな声で「よかった」と何度も頷く母。
それが親子の最後の会話となり、母はその数日後に静かに旅立ちました。
診断士としての第一歩は、母への最高の親孝行という形でもたらされたのです。

 

人間万事塞翁が馬。すべての出会いを力に変えて次なる景色へ

母を見送った後も、父の介護や看取りなど息つく暇もない日々が続きました。
しかし、中小企業診断士の登録を境に、広瀬さんの目の前には今までにない新しい景色が広がっています。

中小企業診断士会の仲間たちとの結束、KCGというコミュニティでの温かい交流。
大学のOBからの勧めで校友会のイベントにも参加するなど、広瀬さんの世界はこれまでになく広がりを見せています。
かつては逃げ出したかった過去の自分とも正面から向き合えるようになり、あらゆる経験が現在の糧になっていることを実感されているそうです。

セミナーの終盤、広瀬さんは「人間万事塞翁が馬」という言葉を力強く語られました。
幾度もの不合格や挫折、原因不明の病、身内の不幸。
一見すると絶望的に思える出来事の裏には、必ず自分を成長させ、新しい道へと導いてくれる「出会い」が隠されていました。

広瀬さんの本当の強さは、自身の弱さを素直に認め、他者に頼る勇気を持っていることにあります。
困難を乗り越え、人の痛みがわかる人間だからこそ、地域の中小企業や経営者の苦悩に誰よりも深く寄り添うことができるのでしょう。

「絶対に笑顔を絶やさない」。
かつてトラウマの中で誓った決意は今、診断士としての活動を通じて、周囲を明るく照らす確かな光となっています。
広瀬さんの飾らない人間味に触れ、人が集まってくる理由がよくわかる、濃密で素晴らしい時間でした。

 

KCGの定例セミナーは毎月開催しています。
「難しそう」「自分には関係ない」と思っているあなたにこそ、一度足を運んでみてほしい場所です。
前で話す講師の言葉や、隣に座った人との対話が、あなたの何かを変えるきっかけになるはずです。
次回の定例セミナーでも、新しい景色を見せてくれる魅力的な講師との出会いが待っています。
ぜひ皆様も会場に足を運び、この熱量を直接体感してみてください。

 

懇親会

今回もセミナー後に懇親会を開催しました。
その一幕をお伝えいたします。

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