9月のKCG定例セミナー講師は、金沢市農林水産局 農業基盤整備課 課長補佐の吉永晃一(よしながこういち)さんです。
吉永さんは金沢市役所で森林整備や林業促進を業務として行っています。
今回のセミナーでは、金沢市の森林と林業の現状と、今後を見据えた施策、そして吉永さん自身のこれからについて語っていただきました。
経験枠で金沢市役所へ
吉永さんは、石川県出身ではなく、金沢市役所に務めるまで石川県に住んだこともありませんでした。
大学の林学科を卒業後、大手製紙会社に入社して、北海道や山陰の工場や事務所で勤務。
そのころは、工場での原材料受け入れや、国内材の調達、製造原価管理などを担当していました。
8年勤務した後に退社し、金沢市役所に職務経験枠で入庁します。
ちなみに、吉永さんの趣味はホルンやアルプホルンの演奏。
ホルンは、社会人オーケストラで演奏を務めるなど積極的に続けています。
アルプホルンとはスイスので長い管の楽器で、日本ではほとんど市販されていないため、自作するのことです。すごいですね。
金沢市の森林
金沢市は市域の6割が森林で、都市の規模のわりに森林が豊かです。
また、自然林、里山林、海岸林など多様な森林があり、それらが都市と近いという特徴があります。
森林の活用は金沢市にとって重要な施策と位置付けられます。
そこで、金沢市では森づくり条例を制定し、市民総ぐるみで森林を守り育てることを目指しています。
森づくり条例の基本方針は以下です。
- 森林を育てる
- 公益的機能の維持・増進に向けた森林の整備保全を進めます
- 森林整備の担い手を育成します
- 森林に親しむ
- 森林と親しむ機会を確保します
- 青少年の森林を大切にする心を培います
- 木を活かす
地域産木材の利用を促進します - 地域の絆を強める
市民総ぐるみの「森づくり」活動を推進します
https://www4.city.kanazawa.lg.jp/soshikikarasagasu/shinrinsaiseika/gyomuannai/2/1/2/5200.html
森林はSDGsとも密接に絡んでおり、とくに「15. 陸の豊かさも守ろう」が大きく関連しています。
それ以外の目標も大きく絡んでおり、森林をどう守り、どう活用するかがSDGsの成否に直結しています。
木材を建築材料への適用の促進や、森のようちえんなどの森林環境教育、森林環境譲与税など様々な施策が実行されています。
国内林業はウッドショックに対応できない?
コロナ禍で木材が高騰、あるいは納期長期化ということを耳にしたことはありませんか?
アメリカやヨーロッパからの輸入が減少し、輸入材が高騰したことが原因です。
国内の林業にとっては、追い風となるはずでしたが… 現実にはそうなりませんでした。
林業事業者は、海外からの供給減によって起こった需要に対応できませんでした。
現在の林業は補助金に依存する部分が多くなっています。
補助金は、計画的な間伐でないと出ない仕組み。計画は5年ごとに立てる必要があります。
(間伐: 森林から育った期の一部を切り倒して林外に出すこと。 全部切り直すのは、主伐という)
そのため、需要が増えることを見越していない計画では、供給を増やすと補助金がもらえなくなります。
また、人員もその計画を実施できる最低限しか居ないため、そもそも供給を増やすことが困難でした。
この他にも、乾燥時間が長いこと、流通経路の複雑さなども、供給量を増やす障害となっていました。
吉永さんのこれから
吉永さんは、市役所という市民に近いところで森林政策に携われることにやりがいを感じています。
しかし、定年までこのまま働けるか?と考えたときに、疑問を感じることもあるそうです。
というのも、役所特有のルールがあり、新しいことを始めるのには労力が居ると感じることがあるとか。
そんな中で、吉永さんは中小企業診断士への挑戦を決めました。
吉永さんの新しいチャレンジにも注目です。
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