2024年2月定例セミナー 「発達障害+シングルマザー≒知財で起業」 宮崎幸奈さん

2024年2月のKCG定例セミナー講師は、株式会社IPアドバイザリー 代表取締役の宮崎幸奈(みやざき ゆきな)さんです。
宮崎さんは知的財産アナリストの資格を有し、特許分析による企業価値算定や技術動向調査などを行なっています。

今回は、宮崎さんが起業するまでの道のりと、現在の仕事について語っていただきました。

 

独立系の知的財産アナリストは極めて珍しい

宮崎さんは知的財産アナリストの資格を有していますが、この資格は石川県内の有資格者では3人のみ。
さらに、全国的に見ても有資格者は企業の知財部で勤務している人がほとんどで、独立している人は極めて少ないです。
そのため、宮崎さんの株式会社IPアドバイザリーがいかに稀有な存在かが分かるでしょう。

知的財産アナリストの試験問題は、
買収先の特許を一緒に買収したらどれだけの価値があるか、どれだけの費用がかかるかといった
戦略的M&Aにおける知的財産デューデリジェンスの問題などが出題されるとのことです。

このような知識を活用するだけでなく、弁理士事務所やインドにある大手特許調査会社とも提携し、
世の中に出回っている特許を分析し、企業の価値を調べたり、
技術動向を調査したり、特許の価値を評価したり、といった業務を行っています。

 

発達障害とうまく付き合うことで世界が広がる

このように活躍している宮崎さんですが、実は発達障害。
発達障害であることがわかったのは30代前半のことでした。
子供の頃は1人で過ごすことが多く、周りとの違いに悩むこともしばしば。
いまでも、日常生活に困ることもあります。

様々な治療と訓練を受けて、日常生活を送れるようになっていますが、
それでも工夫していることがあります。例えば、次のようなことです。

  • 自分の能力を信じない
  • 倍の時間を見積もる
  • 機械に頼る(マクロ、アドオンを活用)
  • 自分ルールに乗せる

 

知財と外国語のスキルを活かして独立

宮崎さんが知的財産アナリストとなったきっかけは、特許と外国語でした。

特許との出会いは、自身の父親。
会社で最も特許を取ったエンジニアとして、毎年のように表彰されていました。
そのため、特許による成功体験を身近なものとして体感して育ちます。

外国語は、CAを目指した学生時代に英語を身につけました。
残念ながら、就職時には航空会社からの募集がなく、CAになる夢は破れてしまい、日本銀行に勤めることに。
しかし、履歴書が華やかになったと、前向きに捉えていました。

その後、結婚して夫と子供と共に上海へ移り住み、中国語を習得。
その暮らしはかなり過酷で、お腹を壊し2ヶ月で5kg痩せるなど、苦労されたようです。

このようにして身につけてきた、知見やスキルを活かして、企業の知財の仕事につきます。
持ち前の外国語スキルを活かして、米国、中国、日本の特許調査を担当しました。
しかし、特許調査はかなり特殊でスキルを磨かなければいけない仕事。
一人前になるまでは、通勤中に涙することもあったそうです。

そんなある日、独立をします。
宮崎さんは離婚し、シングルマザーになったからでした。
「子供の近くでできる仕事」を考えると、フリーランスの特許翻訳者というのが最適解だと考えたからです。
世界で戦える特許翻訳者を目指し、知的財産翻訳検定を英語と中国語の2つの言語で取得。
2科目合格しているのは日本では2人だけだそう。
世界最大手の特許翻訳会社の下請会社と専属契約も果たし、GAFAMなどの特許を調べる機会も得ていきます。

独立して5年後の2019年には法人化し、業務範囲を拡大していきます。
無形財産を収益化し日本を回復させるための力になりたい、石川県復興の力になりたいというのが今の気持ちとのことです。

 

仕事に役に立っている発達障害の性質

宮崎さんは発達障害の性質によって日常生活に支障をきたしている部分があります。
しかし、その性質は裏を返せば仕事の役に立っているとも言えます。

  • 聴力、嗅覚 → 外国語の習得
  • こだわり、諦めの悪さ → リサーチが得意
  • 冗談が通じない → 真面目な印象
  • 自分ルールは死守 → 納期は死守
  • 中枢結合能力の欠如 → 嫌な記憶が蓄積されない

など、日常生活に不便なことであっても、仕事への活用という観点で前向きに捉えることで違った側面が見えてきます。

 

知的財産とは

知的財産とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権の5つを指します。
知的財産は「財産」であり、うまく活用したら儲かるものです。
近年、知的財産を重視する動きが高まっており、コーポレートガバナンスコードにも盛り込まれました。

特許は中小企業に無関係というわけではありません。

  • 大企業を含むサプライチェーンの中におり、技術的優位性を求められる
  • 資金調達する際に、銀行やファンドは特許もチェックしている
  • 補助金申請時も特許が多いと有利になることもある

など、影響は多いです。

また、特許情報を有益な技術情報として活用することも重要です。
なぜなら、特許には他では得られない技術情報が含まれており、
現在の技術知識の80%が特許文献にのみ記されているのだとか。

特許情報の活用方法となる特許分析では、主に特許マップを作成することを目標とします。
特許マップを作成することで、次のような情報が得られ、これからの技術開発の方向性などを決める大きなヒントとなります。

  • 出願人ランキング
  • 企業別出願同行
  • 開発テーマ分析

 

特許の重要性を伝えるこれからの挑戦

宮崎さんは特許の重要性を伝えるため、これまでにないプロモーションに挑戦しています。
展示会に出展し、伝統工芸技術の多角化をマップ化を紹介するなどしています。

また、Discord(ボイス・ビデオ・テキストコミュニケーションサービス)上でのコミュニティを作り、中小企業・スタートアップ・学生向けの知財無料相談や交流を行っています。

この他にも、プロボの活動への参加も行っています。

宮崎さんは、能登の震災があって改めてわかったことがあると言います。
それは、無形財産は毀損しないということです。
地震があっても壊れませんし、無くなったりしないのです。

個人も企業も限られた能力を最大化する。
そのために知的財産面からサポートを続けるのが、宮崎さんの今後のビジョンです。

 

懇親会

今回も定例セミナー後に懇親会を行いました。その様子をご紹介します。

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