2026年9月のKCG定例セミナーの講師は、一般社団法人 Be.カラフル 代表理事の榎 敏弘(えのき としひろ)さんです。
およそ10年ぶり、2回目のご登壇となった今回のKCG定例セミナー。
冒頭から「私はポンコツ社長ですから、ポンコツな話しかできませんが」と、マイクを握りながら屈託のない笑顔で語りかける榎さん。
その気取らない一言で、会場の緊張感は一気にほぐれ、温かな笑いと親密な空気に包まれました。
福祉業界の常識を次々と打ち破り、急成長を続ける組織のトップでありながら、決して偉ぶることはありません。
ご自身の失敗や弱さを飾らずにさらけ出し、等身大の言葉で語りかける姿。
そこには、関わるすべての人の可能性を信じ抜き、誰もが自分らしく輝ける社会を本気で創ろうとする、強烈な情熱と深い愛情があふれていました。
今回は、知識のインプットや単なるビジネスノウハウの提供にとどまらず、一人のリーダーとしての魅力的な生き様や、
周囲を惹きつけてやまない榎さんの温かな人間性に触れた、濃密なセミナーの模様をお届けします。

福祉の枠組みを軽やかに超える、多角的な事業展開
現在、榎さんが代表理事を務める一般社団法人 Be.カラフルは、
「一人ひとりが自由で主体的に働き、自分らしく輝く」という明確なビジョンを掲げています。
その輝きが互いに補い合い、相乗効果で響き合うことで、会社と社会を明るく照らしていく。
高収益をしっかりと上げながらも、関わる誰もがウェルビーイングを感じ、常に創造し挑戦を続ける組織づくりを実践しています。
グループ全体で展開する事業領域は、非常に多岐にわたります。就労移行支援やリワーク支援、放課後等デイサービスといった
障害福祉事業を中核に据えながらも、その活動は従来の福祉の枠には到底収まりません。
たとえば、中小企業の健康経営やメンタルヘルスを根本からサポートする「心の保健室」コンサルティング事業。
さらに驚くべきは、日本文化の精神性を伝える剣道道場「彩士館」の運営です。
日本の武士道や武道文化の真髄を体験できるこの道場には、すでにインバウンドの外国人観光客が300人近くも訪れ、
国境を越えた深い交流が生まれています。
福祉、教育、メンタルヘルス、そして武道。
一見するとバラバラに見えるこれらの事業も、榎さんの中では太い一本の線で繋がっています。
それは「人の可能性を開花させる」という揺るぎない目的。
社会課題を解決するための壮大な実験場として、Be.カラフルは常に進化の歩みを止めることなく、
多角的なアプローチで社会に価値を提供し続けているのです。

「ポンコツ社長」の原点と、失敗から学んだリーダー像
今でこそ多角的な事業を力強く牽引し、多くのスタッフを束ねる榎さんですが、
ご自身の歩みを「失敗ばかりの歴史」と明るく振り返ります。
過去には、発達障害を抱える子どもたちのための家庭学習塾を立ち上げたものの、
現場の体制がうまく整わず、わずか半年で撤退に追い込まれるという手痛い挫折も経験しました。
「事業がすぐに潰れてしまった」「自分は細かい管理や準備が極端に苦手なポンコツだ」と、
隠すことなく過去の痛恨のミスを語る姿に、会場からは時折、共感の入り交じった笑い声がこぼれます。
多くのリーダーが「完璧なトップ」「隙のない経営者」を演じようと苦心するなか、榎さんのアプローチは真逆をいきます。
自らの至らなさや弱さを潔く認め、周囲に対してフルオープンにする。
自分がすべてを抱え込み、強権的にトップダウンで指示を出す組織では、これからの複雑な時代は到底生き残れない。
そう痛感したからこそ、社長の指示系統に依存しない自律分散型の組織である「ティール組織」の概念に共鳴しつつ、
それをさらに独自に進化させた「カラフル組織」という全く新しい概念へと辿り着きました。
リーダーが自らの弱さを開示するからこそ、スタッフは「自分が社長を助けなければ」「自分の強みがここで活かせる」と、
自然と主体性を発揮し始めます。
ポンコツを自認する榎さんの周りには、いつしか個性豊かで優秀なプロフェッショナルたちが集まり、
固い絆と信頼で結ばれた強靭なチームが形成されていったのです。

補色のように引き立て合う凸凹な個性の調和
榎さんが提唱し、実践している「カラフル組織」の根底には、
かつて中学校の美術教師を務めていた榎さんの経験から導き出された「色相環」の理論が息づいています。
色相環において正反対に位置する色同士を「補色」と呼びます。
たとえば赤と緑、黄色と青。単体では強烈に反発し合う正反対の色であっても、
隣り合うことでお互いの鮮やかさを極限まで引き立て合うという素晴らしい性質を持っています。
ただし、干渉しすぎて完全に混ざり合ってしまうと、色は黒く濁ってしまう。
「組織も人間関係も、これとまったく同じなんです」と、榎さんは身振り手振りを交えながら熱弁を振るいます。
Be.カラフルのロゴマークに描かれた「B」と「C」の文字も、色が重なり合って黒く濁らないよう、
絶妙な距離感でデザインされているとのこと。
実際のBe.カラフルのスタッフ陣は、見事なまでに凸凹な個性の集まりです。
感情の起伏が少なく常に冷静沈着に物事を判断するスタッフ(榎さん曰く「サイコパスのような人」と愛着を込めて呼ぶ)の隣には、
感情豊かでエネルギッシュに周りを巻き込む人がいる。
計画や細かな準備が極端に苦手な榎さんの隣には、緻密なスケジュール管理や実務を得意とし、
組織の屋台骨を支えるゼネラルマネージャーがいる。
全員を同じ色に染め上げるのではなく、自分とは正反対の個性を持つ相手の存在を心から認め、頼り、互いに補い合う関係性。
適度な距離感を保ちながらそれぞれの色を尊重し合うことで、チームとしてこれまでにない美しい調和が生まれるのです。
幾重もの失敗や組織の軋轢を乗り越える中で、この「互いの色を引き立て合う」という文化が確固たるものになっていきました。

自由と責任、そして凡事徹底の組織づくり
現在、Be.カラフルでは細かなルールで人を縛ることを極力やめ、スタッフ一人ひとりの裁量と自由を大きく認める経営を行っています。
しかし、自由であることは決して楽なことではありません。
「自由すぎてルールがない」という環境に戸惑いや不安を口にするスタッフがいたり、
時には価値観の違いから組織を去る人がいたりするのも事実です。
榎さんはこうした組織のリアルな現実からも決して目を逸らしません。
去る者は追わず、戻る者は温かく迎え入れる。
実際に、一度は別の道を選んだものの「やっぱりここがいい」と再び戻ってくるスタッフが何人もいるというエピソードが、
この組織の持つ懐の深さと居心地の良さを何よりも物語っています。
自由を重んじる一方で、組織として決して妥協しないのが「凡事徹底」です。
笑顔での挨拶、時間厳守、整理整頓。毎月行われる全体でのオンライン朝礼には、
スタッフ全員が開始5分前には必ず画面の前に揃い、遅刻者は一切いないといいます。
当たり前のことを誰よりも当たり前にやり抜く。そんな規律が根底にしっかりとあるからこそ、真の自由が成立するのです。
また、セミナーの中では心理学者マズローの欲求段階説を引き合いに出し、
「誰かに認められるための他者承認ではなく、自分で自分を認める『自己承認』を育んでほしい。
そして最終的には、他者や社会へ貢献する『自己超越』を目指してほしい」と熱く語る榎さん。
スタッフ自身のウェルビーイングを高めるための社内研修や心のケアにも惜しみなく投資を行っており、
理念を単なる理想論に終わらせないための泥臭い実践が、日々の業務の中で脈々と続けられています。

街全体を彩る「カラフルタウン」への果てなき夢
セミナーの終盤、榎さんが目を輝かせながら語ったこれからの展望は、会場全体をさらなるワクワク感で包み込みました。
スクリーンに大々的に映し出されたのは、金沢駅前の一等地にそびえ立つ、Be.カラフルの巨大な専用ビルの完成予想図。
「ついに駅前のホテルを買い取り、ビルを建設します!」という衝撃の発表に会場がどよめきますが、
直後に「実はこれ、4月1日のエイプリルフールにスタッフについた嘘なんです」と明かされ、会場は大きな笑いの渦に包まれました。
わざわざ手の込んだ合成写真まで作って壮大な夢を語るお茶目さに、榎さんの真骨頂が表れています。
しかし、その冗談の裏には、確かな未来へのビジョンが隠されていました。
直近の新たな挑戦として、就労継続支援B型事業所によるキッチンカー「町を彩るカラフル えのキッチン」の展開が始動しています。
施設という閉ざされた空間の中に留まるのではなく、利用者が自らの手で街の人々に美味しい食と笑顔を届ける、まったく新しい社会参加の形。
さらに、日本社会全体が直面する深刻な人手不足という構造的な課題に対し、外国人材の受け入れやAIの積極的な活用、
そして障害のある方の卓越した才能を見出し、企業の真の戦力へと繋げていく事業構想も力強く動き出しています。
榎さんが見据える究極の夢。それは、金沢の駅前を中心としたエリアを、誰もが排除されることなく、
ありのままの色で共存できる「カラフルタウン」へと育て上げること。
福祉を単なる支援や保護の枠組みから解き放ち、「人の可能性を開花させる社会の実験場」へとアップデートし続ける終わりなき挑戦です。
弱さを認め合い、人を信じ、前例のない道を笑顔で切り拓いていく榎さんの姿。
そこには、教科書通りの経営論や理屈では決して得られない、人と組織を突き動かす根源的な熱量が宿っていました。
会場を包んだあの温かな一体感と知的な興奮は、画面越しや文字だけでは味わい尽くせない、リアルの場だからこその醍醐味です。

次回のKCG定例セミナーでも、時代を切り拓く魅力的なフロントランナーをお招きし、
ビジネスと人生の視界を大きく広げる刺激的な出会いをお届けします。
現場で迷い、人と真摯に向き合い、自らの道を模索しているすべての方に、ぜひ会場へ足をお運びいただき、
この熱気を肌で体感していただければ幸いです。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
懇親会
今回も、定例会後に懇親会を開催しました。その一幕をご紹介いたします。













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