2023年2月のKCG定例セミナー講師は、株式会社life plus いろどり訪問看護リハビリステーション 代表取締役の森木彩奈(もりき あやな)さんです。
森木さんは北海道小樽市出身ですが、金沢で訪問看護の会社を経営し、自身も看護師として仕事を行っています。
今回は、訪問看護とは何か、訪問看護師を目指したきっかけ、苦労した時期、これからの展望に至るまで、話していただきました。
訪問看護は訪問介護と違い医療行為がメイン
訪問看護は、かかりつけ医の指示を受けた看護師等が病気や障害を持った方の生活場所であるご自宅等に伺い、その人らしい療養生活をおくれるように、支援するサービスです。看護師、理学療法士が伺い、医療処置やリハビリを行っています。
また、訪問介護とは異なり、訪問看護は医療行為を行います。具体的には、点滴、服薬管理、緊急時の対応などです。
訪問介護では料理や洗濯などの補助がメインとなりますが、訪問看護では医療行為がメインになります。
利用者は高齢者だけでなく、障害者や小児なども対象になっています。
医療行為がメインとはいっても他の作業をしないわけではありません。
利用者の自宅は体をうまく動かせない影響からか、ゴミ屋敷のようになっているところもあるそう。その掃除なども行ったりしています。
食事が十分に準備できない場合には、おにぎりを作ったり、買い出しに行ったり、ということもしています。
利用者が迷子になった時は、警察と連携して探したりもしています。
訪問看護はこれからさらに重要性を増してきます。
今後は超高齢化社会を迎え、2035年には要介護・要支援者数が人口の25.5%まで増加することが予想されています。
独居の高齢者も増加しており、介護・看護の需要がますます増加しています。
血液浄化センターが訪問看護を目指すきっかけ
森木さんは北海道小樽市出身。
低出生体重児・先天性肺動脈弁狭窄症での出生で、幼少期は様々な治療が行われました。
小学校・中学校はほとんど学校に行けない日々。
そんな中で訪問看護と出会い、その存在を知りました。
自身も看護学校へ進み、卒業間近となりました。
卒業試験の真っ只中、親の介護が始まります。
介護者側となり、辛い日々を過ごすことになりました。
と同時に、幼少期の親の気持ちを理解する機会になりました。
看護学校卒業後は、札幌の総合病院に就職。
勤務してから、血液浄化センターに異動となります。
そこでは、透析を行う部署でした。
透析とは、血液の毒素を取り除いて体に戻すという医療で、腎臓の機能不全などがある患者に対して行っています。
ある時、決まった時間に来る患者さんが来ないことがありました。
連絡を取ろうとしても、連絡が取れない。
自宅に行ってみると、意識がなく、既に亡くなっていました。
それだけでなく、家はゴミ屋敷、ご飯はコンビニ弁当、飲んでいると言っていた薬はほとんど飲んでいない、そんなことが分かってきました。
「病院だけでは命は守れない。看護師として何ができるのか。」
「もう少し早く見つかっていれば、患者さんは死ぬことはなかったかも知れない。」
そんなことを考えているうちに、訪問看護の必要性を強く感じ、訪問看護の会社の設立に思い至ります。
会社設立当初は問題だらけ
2017年、株式会社life plusを設立し、フランチャイズで訪問看護事業を立ち上げます。
この時、金沢市で訪問看護が足りないという情報を聞き、金沢へ移住しました。
会社を設立したのは、訪問看護事業を行うには指定を得る必要があり、法人でないと指定されないためです。
フランチャイズで訪問看護を立ち上げたはいいものの、うまくいきません。
肝心なことは聞かないと教えてくれない上、聞いてもよく分かりません。
開業1年で資金が底をついてしまいます。
病院と訪問看護の違いをまざまざと感じさせられました。
他の人からも、「そんなんじゃうまくいかない」「会社を手放せば」などと言われ続け、
「うまくいかないのではないか」と暗示をかけられたような状態に。
泣いてばかりの日もあったそうです。
気分も落ち込み続け、本来ならうまくいくことすら失敗する、負のサイクルに陥っていました。
転機は石井代表との出会い
2019年、フランチャイズを脱退し、経営改善に着手します。
このとき、KCGの石井代表に出会い、様々な悩みを真剣に聞いてくれ救われたそうです。
なぜ会社を設立したのか、何がしたいのかを改めて問い直し、様々な改善に着手します。
固定費削減や営業施策により、業績は上向きに。
現在は黒字を続け、当初の累積赤字は無くなってきています。
本人の弁では「まだまだ勉強中」とのことですが、もう立派な経営者です。
訪問看護を通して参画している活動
森木さんは訪問看護事業だけでなく、それを通して様々な活動を行っています。
具体的には、以下のようなものがあります。
- 認知症フォーラム・セミナー
- ソーシャルフットボール ルミナス
- 焼き菓子店の開業
例えば、焼き菓子店の開業は利用者の希望を叶えようとしたものでした。
その利用者は、目がかろうじて見え、耳は聞こえず、喋ることもできないという状態。
「文字を見る」という行為を通じて、コミュニケーションしていました。
森木さんは、「一人暮らしをしたい」という希望を叶えるため、訪問看護で支えていました。
その中で「焼き菓子店を開業したい」という希望に応えるため、クラウドファンディングでの資金調達を行うなど活動しました。
いろどり訪問看護リハビリステーションが目指すもの
人は必ず歳をとります。
自分や家族がどう生きたいのか、その人らしい いろどり豊かな生活をしてほしい。
そのお手伝いをしたい。
それが、いろどり訪問看護リハビリステーションが目指しているものです。
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