2026年3月のKCG定例セミナーの講師は、中小企業診断士の南山 侑希(みなみやま ゆうき)さんです。
行政は「Noから始まる関門」ではなく、「ともに地域を支えるパートナーだ」。南山さんは、そう語ります。
13年間の公務員経験を経て中小企業診断士となった彼が、2026年3月のKCG定例セミナーに登壇しました。
そして今、3月末をもって白山市役所を退職し、新たな一歩を踏み出そうとしています。
内側から見た行政のリアルを語る声には、制度の解説よりずっと深いところに、地元への愛情と、誠実さが宿っていました。
3月末、白山市役所を去る日に思うこと
このセミナーが行われた2026年3月、南山さんは静かな節目を迎えていました。この月末をもって、白山市役所を退職するのです。石川県警察本部に始まり、石川県庁、そして地元・白山市役所と、13年にわたって公務員として歩んできた日々に、ひとつの区切りが訪れます。
「行政は目に冷たく感じてしまうこともあるかもしれない。でも、その中にいる職員は、皆さんと同じようにこの地を良くしたいと思う、一人の人間です」。退職を目前に控えたその言葉には、組織への感謝と、地域への変わらない思いが込められていました。
コンピュータを学んだ青年が、なぜ故郷の行政に飛び込んだのか
南山さんは白山市(旧鶴来町)の生まれで、今もその地に暮らしています。
金沢高校を卒業後、大阪の大学へ進学し、情報科学科でコンピューターサイエンスとプログラミングを学びました。
テクノロジーの最前線にいながら、彼の胸の中で育ち続けていたのは、意外なほどシンプルな思いでした。
「就職を考えた時、やっぱり地元が好きだなって。地元に貢献できる仕事がしたい——それだけだったんです」。
石川県庁への就職を目指したものの、最初の採用先は石川県警察本部でした。
小さな「誤算」のように思えたその出来事が、のちに南山さんの視野を大きく広げる財産になるとは、当時は思いもしなかったことでしょう。

警察・県庁・市役所。三つの現場が磨いた、本物の目線
石川県警察本部では運転免許行政からキャリアをスタートし、9年間にわたって人事・給与・労務管理・DX推進など管理部門の各所を経験しました。
その後、念願だった石川県庁への出向を果たし、2年間、予算編成と議会対応という行政の「心臓部」に携わります。
「知事に一つの施策を通すだけで、20人以上の決裁者を経由しなければいけない。
最初はそれが不思議で仕方なかったけど、やっているうちに分かってきた。行政は間違えてはいけない組織なんです。
その重圧が、あの複雑な仕組みを生んでいる」。
県庁勤務を終えた後は退職し、今度は地元・白山市役所へ。
担当はデジタル人材育成と情報システム管理——大学で磨いたITのスキルが、ここで初めて故郷のために動き出しました。
警察行政・広域行政・基礎自治体という、三層の現場を経験した人間が持つ視野の深さは、他の誰にも代えられないものです。

「行政は敵じゃない」——内側にいたからこそ言える、静かな確信
三つの組織を経た南山さんが、今、心から感じていること。それは「変えたいと思っている職員は、確かにいる」という事実です。
「全員が前例に従いたいわけじゃないんです。でも、失敗すれば批判されて、成功しても特に報われない。
そういう構造の中で、みんなどんどん動けなくなってしまう」。
その言葉には、批判ではなく、同じ場所に立ち続けた人間だからこそわかる、深い共感が滲んでいました。
中小企業診断士として地域に向き合う今、南山さんが大切にしているのは「担当者が上司に説明できる言葉で話す」ことだといいます。
「『新しいですね』よりも、『これなら上に説明できます』と感じてもらうことが、行政との関係を変える第一歩なんです」。

退職の先へ——生まれた町で、この町の未来を共につくる
「地元が好きだから帰ってきた」というシンプルな原点は、37歳になった今も変わっていません。
公務員という立場を離れた南山さんが次に描くのは、行政だけが地域を支えるのではなく、事業者や住民が「ともに地域を作る仲間」として連携していく姿です。
むしろ内側を知り尽くしているからこそ、外から動かせることがある——そう確信しているのです。
南山さんは、自治体の課題について次のように語りました。
「自治体の財政は本当に厳しい。
新しいことができる余白がどんどん小さくなっている。
だからこそ、外の力が必要で、行政と地域の橋渡しをできる人間が必要だと思っています」。
その言葉を聞いた時、会場の空気がわずかに変わった気がしました。
地元への愛を出発点に、行政という複雑な生き物の内側を生き抜いてきた南山さん。
3月末、公務員としての13年間に幕を下ろし、今度は「行政と地域の日常的な相談相手」として、この白山・金沢の地での新たな挑戦が始まります。

懇親会
今回も定例セミナーの後に、懇親会を行いました。
参加者同士が講師・受講生の垣根なく交流する有意義な場となりました。
その一幕をご紹介いたします。















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