7月のKCG定例セミナー講師は、加藤手織牛首つむぎの加藤治さんです。
加藤さんは、白山市白峰地域に古くから伝わる牛首紬(うしくびつむぎ)の工房を経営するだけでなく、
KCGの石井代表の同級生でもあります。
60歳までは高校教師
加藤さんは牛首紬を製造販売を家業とする家に生まれましたが、60歳までは県立高校の体育の教員として勤めていました。
特に、スキーのクロスカントリー競技への造詣が深く、選手・監督・コーチとして39回の冬季国体への出場経験があります。
白峰クロスカントリー競技場で練習を積んでいたそうです。
また、スキー好きが高じて、長野オリンピックでは競技役員を務めました。
教員の仕事ではないため、休みを取るのが大変だったとか。
2012年に定年退職後に家業を手伝い始め、2016年に事業承継により代表となりました。
長い歴史と伝統を有する牛首紬
加藤さんが家業とする牛首紬とはどんなものでしょうか。
最大の特徴は、2頭以上の蚕が作る、糸が複雑に絡み合った「玉繭(たままゆ)」と呼ばれる繭を使うことです。
そのため、ところどころに節ができ、ゴツゴツした風合いの味のある生地が持ち味になっています。
また、繭から糸をひき、生地を織るまでを一貫して国内で行った生地は極めて少なく、牛首紬がいかに希少であるかが分かります。
この牛首紬は、1159年に平治の乱で敗れた源氏の落人が織物を伝えたことが起源と言われ、800年以上の伝統を有します。
しかし、800年以上の間、ただ存在していたわけではなく、幾度となく存亡の機に立たされました。
特に、太平洋戦争期には「ぜいたく品禁止」の名のもとに、絶滅間近となってしまいます。
このとき、加藤手織牛首つむぎ2代目の加藤三治郎だけが、自家養蚕により原糸を生産し、伝統を現在へと引き継ぎました。
目前の危機と新たな試み
現在においても、昨今叫ばれる着物離れだけでなく、
コロナ禍で出かける機会が減ったことで、着物を着る機会がなくなり、少なかった需要がさらに少なくなっています。
それによって、小売店や卸の閉業や仕入量減少が顕著となってきました。
そんな中で加藤さんは、ホームぺージを立ち上げ牛首紬の魅力を発信するとともに、
ECサイトを立ち上げ、直接消費者へ販売する販路を開拓しようとしています。
https://katoushikubitsumugi.com/
さらに、着物以外にも使っていただけるように新商品開発にも力を入れています。
「がまぐちプロジェクト」として、コインケースやバッグなどを開発。
見学会や発表会を通じて、ファンを増やしています。
伝統工芸は守らなければいけないことも多いですが、ただ守るだけでは淘汰されて行ってしまうのかもしれません。
戦時期の絶滅危機に試行錯誤で歴史と伝統を現在まで繋いだように、
今もまた、新たな試みによって歴史と伝統を未来へ繋いでいく加藤手織牛首つむぎから目が離せません。
この記事へのコメントはありません。