5月のKCGセミナーの講師は、株式会社安藤芳園堂 中小企業診断士の安藤謙輔(あんどう けんすけ)さんです。
今回は生成AIの活用について、語っていただきました。
会場には「ChatGPTは知っているけれど、実際にどう使えば仕事の役に立つのだろう」といった期待や、少しの不安が静かに漂っていました。
講師の安藤謙輔さんが登壇すると、空気が一気に引き締まります。
テーマは「ゼロから始める生成AIセミナー ChatGPTフル活用術」。
その言葉に背中を押されるような、そんな夜の始まりでした。
異色のキャリアが導く現場主義のAI活用
安藤さんは薬剤師として社会人としてのキャリアをスタートし、
製薬会社の営業職や医薬品卸、中小企業診断士、コンサルタント、そして家業の経営まで、幅広い経験を積んできました。
その歩みの根底には、常に「現場で役立つこと」を大切にする姿勢があります。
AIとの出会いは、子どもの頃に夢中になったファミコンの「ドラゴンクエストIV」。
仲間がAIで動くことに感動した記憶が、今も心に残っているそうです。
現在はChatGPTやGemini、Claudeなど複数のAIを日々の業務に取り入れています。
「AIは現場でこそ生きる道具です」と語る安藤さんの言葉には、経験と情熱があふれていました。
生成AIがもたらす中小企業の新しい可能性
「AIは大企業だけのものではありません」と安藤さんは語ります。
地方や中小企業こそ、AIを使いこなすことで大きなチャンスをつかむことができるのです。
会場でのアンケートでは、参加者の半数以上がAIを日常的に使っているという結果が出ました。
しかし「本当に使いこなせているのか」と問われると、手が止まる方が多いのも事実です。
安藤さんは、営業資料の下書きをChatGPTで作成したり、議事録作成にAIを活用したりした事例を紹介しました。
「AIに任せることで、時間と発想の余裕が生まれました」という声が、参加者の間にも静かに広がっていきます。
どんな指示を出せばAIが“使える相棒”になるのか、日々の工夫が成果を左右することが伝わってきました。
AIの便利さとリスクを両立させるために
生成AIは、まるで魔法の杖のように感じられます。
一言入力すれば、文章や画像、時にはラジオ番組まで生み出してくれる時代になりました。
しかし、便利さの裏には必ずリスクが潜んでいます。
安藤さんが強調したのは、情報漏洩・誤情報・著作権トラブルの三つです。
情報漏洩を防ぐには、オプトアウト設定を必ず確認することが大切です。
誤情報、いわゆるハルシネーションには、AIの出力をうのみにせず、必ずファクトチェックを重ねることが欠かせません。
著作権の問題に関しては、生成物の利用規約や権利関係を丁寧に確認することが必要です。
「便利さの裏にあるリスクを知っておくことで、AIはもっと安心して使えるようになります」と安藤さんは語ります。
参加者は真剣な表情でメモを取り、その言葉を心に刻んでいました。
プロンプトの工夫でAIは“相棒”になる
「AIは指示次第で“できる部下”にも“困った新人”にもなります」と安藤さんは話します。
プロンプト、つまりAIへの指示の出し方ひとつで、AIの答えが劇的に変わることを実演してみせました。
役割を与える、条件や出力形式を明確にする、参考情報や前提条件を添える、段階的に指示を出す——こうした工夫がポイントです。
たとえば、「金沢市内の落ち着いた蕎麦屋をランキング形式で教えて」と依頼する際、「あなたは地元民のそばマニア。各店の特徴やおすすめメニューも添えて」と条件を加えることで、AIの回答がぐっと洗練されます。
実際にプロンプトを入力し、その変化をライブで披露した場面では、会場から「なるほど」「これは使える」といった声がもれました。
日々の業務でAIを活かすには、こうした細やかな工夫が大きな違いを生むのだと感じさせられます。
画像生成AIの悩みと、解決のヒント
「文字が滲む」「画像が切れる」など、画像生成AIを使うときにありがちな悩みについても、安藤さんは具体的なヒントを紹介しました。
高解像度指定や特定フォントの活用、余白の取り方など、ちょっとした工夫で画像が見違えるようになります。
スクリーンに映し出された画像が、一手間で生まれ変わる瞬間には、参加者の目が輝きました。
どの場面でどのテクニックが最適かは、実際に試行錯誤しながら自分なりのコツを見つけていくことが大切です。
AIとの対話を重ねることで、より良い成果につながっていきます。
業務効率化の最前線——議事録とスライド作成
議事録作成の自動化については、「音声→文字起こし→AI要約」という流れを紹介しました。
Zoomの録音・自動文字起こしやNTTのAIサービス、ClovaNoteの活用例もありました。
議事録のフォーマットもAIに学習させれば、自社仕様にできるという話には、多くの参加者が大きくうなずいていました。
スライド作成では、ChatGPTで骨組みを作り、専用サービスでデザインを仕上げる方法が紹介されました。
GenSparkやGamma、ミニキャンバスなど、それぞれの特徴も解説されます。
「ストーリーの骨組みづくりが最重要。デザインはAIに任せてしまえばいい」という安藤さんの言葉に、肩の力が抜けたという方も多かったようです。
どのツールがどんな業種や用途に最適かは、実際に触れてみることで自分に合うものが見つかるのだと感じられました。
会場に響くリアルな声と、日常へのヒント
質疑応答の時間には、「自作AIの作り方」「教育現場でのAI活用」「AIの得意・不得意分野」など、現場目線の質問が次々と飛び交いました。
安藤さんは「AIは使う人の工夫次第で必ず“相棒”になる」と語ります。
自作したGPTsや、飲食店向けのレシピ生成AIのデモも披露され、「自分でもやってみたい」「もっと深く知りたい」といった声があちこちから聞こえてきました。
まとめ——現場主義のAI、その先へ
セミナーの最後、安藤さんは「AIの進化は止まりません。まずは日常的に使ってみてください。失敗しても大丈夫。現場で泥臭く使い倒すことで、AIは必ず“相棒”になります」と締めくくりました。
生成AIは魔法の杖ではありませんが、現場の知恵と工夫があれば、どんな業種・職種でも大きな武器になります。
日々の業務や生活の中でAIを活かすヒントは、これからも広がっていくでしょう。
会場を後にする参加者の背中には、今夜得た知識と、これから始まる新しい挑戦への静かな意欲が感じられました。
次回は、あなたがその一歩を踏み出す番かもしれません。
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