2024年6月のKCG定例セミナー講師は、おさかなゆきちゃん店主の公文ゆき(くもん ゆき)さんです。
公文さんは「おさかなエバンジェリスト」を公言し、魚と惣菜を販売する「おさかなゆきちゃん」を経営しています。
また、今回は中小企業診断士・税理士の高稲俊輔さんがサポーターとして、登壇しました。
今回は、「おさかなエバンジェリスト」とは何か?なるために何をしているのか?そもそも、どうやって開業し、ここまで経営してきたのか?について、幅広く語っていただきました。
おさかなエバンジェリストは、魚を好きになるきっかけを作り、漁業者と消費者を結ぶ架け橋になる
公文さんは、魚屋・惣菜屋として「おさかなゆきちゃん」の店舗経営を行っています。
が、それ自体をやりたいというわけではありません。
公文さんの夢は「おさかなエバンジェリスト」になることです。
おさかなエバンジェリストの役割は、「魚を好きになる」ためのきっかけづくりと、魚を通して人と人とをつなげる橋渡し。
特に重視しているのは、魚料理は手間がかかる、というハードルを乗り越えるきっかけをどう提供するか、ということです。
経済的に自立するために魚屋をやっている、というスタンスです。
魚に対するこだわりは、並ではありません。
全ての魚は自分の目で見て選び、値段よりも質や味を重視し、産地だけでなく船にもこだわります。
冷凍原料はエビや貝以外はほぼ使いません。
自分が納得できるものを提供しています、
おさかなエバンジェリストを志したきっかけは、アルバイトでたまたま配属された水産部門
くもんさんは、石川県白山市(旧松任市)出身。
泳ぐこと、食べること、イルカが好きで、幼い頃の将来の夢は「マリンガール」か「水産研究者」。
水産系の大学を目指すも叶わず、地元の食品系短大に進学しました。
短大入学後にハマったのが、ダイビング。
ダイビングの資金を稼ぐためにスーパーのアルバイトを始めましたが、そこでたまたま配属されたのが水産部門。
当時はほとんど魚の知識はありませんでしたが、仕事を通じて徐々に習得していきました。
その後、スーパーの水産部門で長く働きます。
開業のきっかけは、副業の「おさかな会」
2019年2月に、働きながら「おさかな会」をスタートします。
「おさかな会」では、スーパーで買える魚を料理し、親しい人に振舞ていました。
しかし、ほどなく予約が取れないほど盛況になっていきます。
1年後の2020年2月には、コロナ禍になったこともあり「おさかな会」の活動をすっぱりと中止します。
2020年からは、開業に向けて創業塾や創業相談会に参加しました。
2021年には、PCで事業計画を作成したり、ポップアップショップを出店したりと開業に向けた知識習得や実践をしていきます。
2021年末に、専門家派遣として今回サポーターとして登壇する高稲さんとも出会いました。(最初は嫌いで、専門家を変えてもらいたかったそうです)
その後に紆余曲折はありましたが、2022年11月「おさかなゆきちゃん」をグランドオープン。
開業後も浮き沈みはあるものの、なんとか今までやってきました。
山盛りカキフライは、看板商品
2024年3月に「おさかなゆきちゃん」では、インスタで、「いいね」一件につき、牡蠣3個仕入れるというイベントを開催します。
たくさん「いいね」がきて、大量の牡蠣を仕入れることになりました。
このイベントは高稲さんが仕掛けたものでした。
高稲さんは、「カキフライは山盛りにしてください」「売れ残ったら、『売れ残ったので助けてください』と出してください」と指示します。
公文さんは訳がわからぬまま、そのまま言われる通りにやります。
結局売れ残ってしまい、「助けてください」という投稿を出すことに。
すると、売れ残りはほとんど出ず、ほとんどを売り切ることができました。
この狙いはなんだったのでしょうか。
高稲さんは、今の公文さんの課題を解決するクリティカルな打ち手だと語ります。
その課題とは、おさかなエバンジェリスト活動本格化に向けた『余白』を作ること。
課題解決のためには、看板商品を作ることと、顧客との共創が必要で、これを実現するための打ち手だったのです。
看板商品を作ると何がいいのでしょうか。
看板商品に購買が集中するため、開発や生産の絞り込み・集中が可能になります。
また、仕入れ・仕込みがシンプルになり、廃棄ロスも抑制できます。
さらに、看板商品は、「たまたま来店する」という客層から「わざわざ来店する」客層へのシフトを促します。
わざわざ来店する顧客は、客単価も高くなります。
つまり、利益的にも、時間的にも、気持ち的にも余力ができてくるというわけです。
これからの「おさかなゆきちゃん」
地元のお客様だけでなく、全国のお客様に魚を楽しんでほしいと、全国発送を始めます。
2025年には、カニ面・日本酒セットの全国発送を始める構想もあります。
2027年には、ツアー開催ということも考えているそうです。
公文さんは、事業拡大を通じて経済的な自立を確たるものにして、「おさかなエバンジェリスト」の夢を追いかけていきます。
高稲さんは、「凡人」をいかに取り込むかが「エバンジェリスト活動」の成否を分ける、と考えています。
今は、「わかる人だけわかってくれればいい」というフェーズですが、今後はその影響力をもっと拡大させていく必要があります。
そういうフェーズに見合った支援へ切り替えていく、とのことでした。
おさかなエバンジェリストを目指す公文さんと、それを支援する高稲さん。
今後もその活躍に目が離せませんね。
懇親会
今回も会場でそのまま懇親会を行いました。その一幕をご紹介いたします。
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