2023年1回目となる1月のKCG定例セミナー講師は、七尾商工会議所SDGsプロジェクト推進室長の入口翔(いりくち しょう)さんです。
今、七尾市のSDGsが熱い。その仕掛け人が入口さんです。
金沢市出身ですが、七尾市に移住し地域活性化に注力。
今回のセミナーでは取り組みの全体像から詳細に至るまで、お話いただきました。
入口さんは現在、二足の草鞋ではなく、なんと四足の草鞋を履いています。
- 七尾商工会議所 SDGsプロジェクト推進室長
- のと共栄信用金庫 ふるさと創生部次長
- 一般社団法人七尾青年会議所 副理事長
- 金沢大学大学院 人間社会環境研究科 地域創造学専攻 (大学院生)
ムーブメントは仲間がいてこそ起こる
世の中を変えるようなムーブメント・時代のうねりのようなものは、どのように起こるのでしょうか。
リーダーが崇高な理念を掲げて行動するだけでは起こらないようです。
ムーブメントにするには、賛同する仲間が必要だと入口さんは考えます。
公園で裸踊りをするようなおかしなことであったとしても、仲間が増えていけば、それがムーブメントになりうるのです。
始めた人、最初に賛同した人、それを見て輪に加わった人、それら全員がムーブメントに関わっています。
地域活性化をするためのムーブメントも同じです。
一人や一組織では、大きなムーブメントは起こしにくく、活動も尻すぼみになる可能性が高まります。
様々な仲間を巻き込んで活動することで、大きなうねりにしていきます。
地域の課題解決のためのコンソーシアム
入口さんが活動する七尾市では、他の地方都市と同様に人口減少と少子高齢化が深刻な課題になっています。
課題解決の取り掛かりとして、「事業所の減少をなんとかしたい!」という思いから、
創業支援の枠組みとなるコンソーシアムを立ち上げ、その中で見えた課題を解決するためにSDGsコンソーシアムを立ち上げました。
産官金連携コンソーシアム「ななお創業カルテット」
事業所減少に歯止めをかけるため、創業支援を行う産官金連携コンソーシアム「ななお創業カルテット」が2014年に始動。
単独の組織で動くのではなく、複数の組織を巻き込んだ「寄ってたかっておせっかい体制」にすることで、創業を大きなムーブメントにしようとしました。
創業相談や開業件数は大きく増えました。
立ち上げ〜2022年までの開業件数は100件以上と大きな成果をあげています。
しかし、現状のペースでは地域経済の縮小は止められず、+αの取り組みを考える必要が出てきました。
また、コロナ流行などによる人々の価値観変容から、地域を意識した創業支援が必要となってきていました。
産学官金民連携SDGs・ESG推進のための七尾SDGsコンソーシアム「ななおSDGsスイッチ」
これらの課題に取り組むため、9団体で取り組む「ななおSDGsスイッチ」が2021年10月に始動。
豪華で、考えられる最高の団体が揃いましたが、中身がないと仕方ありません。
また、事業者対象の大規模SDGs意識調査では、地域や自社の将来に不安がある様子が伺えました。
- 七尾の未来が心配になることはあるか 「よくある」「ときどきある」の合計: 86%
- 自社の将来が心配になることはあるか 「よくある」「ときどきある」の合計: 81%
しかし、SDGsへの理解や意識が低く、何をしていいか分からない、という実態が明らかになってきました。
そこで、取り組み内容を、土壌づくり(地域環境の整備)から花づくり(プレイヤーの育成)まで細かく設定し、全体像を描きました。
具体的な取り組み事例(イベントなど)
具体的な取り組み事例について、その一部を紹介します。
生物多様性環境学習のイベント開催
一つ目の取り組みは、七尾市の廃校を利用した生き物調査。
この取り組みでは、子供たちに七尾市内に生息する動物などを撮影してもらい、
地域にどんな生き物が生息しているのか、どんな環境があるのか、そういったことに興味を持ってもらう取り組みです。
しかし、ただ知ってもらうだけにとどまりません。
七尾はトキ放鳥エリアの候補地。
このイベントで撮った写真は、専門家とも共有し、どこにどんな生き物がいるのかを調査します。
餌や天敵となる生き物、過ごしやすい環境がどこにあるのかなどといった視点での調査に活用されています。
子供たちには楽しんでもらって、トキ放鳥のためにそのデータも活用できる、
一石二鳥のイベントとなっています。
地域のあらゆる主体がインプットする場「能登SDGs市民大学」の開講
SDGsに関する講師を呼んで、市民のための学習の機会である「能登SDGs市民大学」を開講しました。
SDGsとは何か?、地域課題や地域資源、ダイバーシティ&インクルージョンなどについて学ぶカリキュラム。
有名講師を呼んでの開催となりました。
「30人程度集まればいいかな」と思っていたところ、蓋を開けてみれば190名もの受講者が集まります。
その受講者の年代も10代~70代まで幅広く、七尾出身者だけでなく移住者も。
七尾のサラダボウルのようになっていました。
今後の七尾でのSDGsの展開に欠かせない、地域の知識習得に有効な取り組みとなりました。
市内教育現場におけるSDGsの出前授業の開催
大成功と言える「能登SDGs市民大学」にも、一つ弱点がありました。
それは、未来を担う子供たちが参加できなかったこと。 夜間開催だったのです。
そこで、SDGsの出前授業を行いました。
今の子供達は、Z世代の次、α(アルファ)世代と呼ばれています。
彼らが七尾に望んでいることは、大人たちとかなり異なり、独自性を重視しているようです。
そして、その望みやあるべき姿を設定し、バックキャストで今すべきことを考えました。
そのほかにも、高校生のソーシャルビジネスグランプリの参加のサポートなど、
教育現場にも入り込んだ未来の七尾を見据えた支援を行っています。
周りを巻き込むなら一番汗をかかないといけない
入口さんは「一人でできることはたかが知れている。だからこそ、他人を巻き込んでいく。」と言います。
仲違いしていても、どこかで繋がれるところがあるはず。その繋がりを大事にして巻き込んでいきたいとのことでした。
巻き込むなら、自分が一番汗をかかないと周りがついてきません。
汗をかいているから、助けてくれる仲間ができます。
入口さんはこれからも、一番汗をかいて七尾のSDGsの取り組みを盛り上げていきます。
懇親会
今回は、セミナーを開催したアルカンシエル金沢で、そのまま懇親会を開催。
その様子を一部ご覧ください。
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