2024年11月のKCG定例セミナー講師は、中佐経営診断事務所 代表を務める中小企業診断士の中佐訓康(なかさ のりやす)さんです。
中佐さんは、石川県中小企業診断士会の専務理事を務めながら、中小企業基盤整備機構の経営支援・復興支援アドバイザーや信用保証協会の専門家派遣事業などを通じて、さまざまな側面から中小企業を支援しています。
珠洲市の4名の飲食店経営者が共同で立ち上げた「すずキッチン」のサポートについて、語っていただきました。
事業立ち上げのプロセス
最初の支援は事業形態の選択でした。4名の経営者が均等に出資する合同会社という形態としました。
株式会社と比べて設立コストを抑えられ、数年間の期限付き事業という性質にも適していたためです。
復興に目処がつき、4人がそれぞれの飲食店の経営に戻っていく…
それまでの時限的な経営を想定していたのです。
経営理念とビジネスモデルの構築では、経営者たちは中佐さん支援をほとんど必要としませんでした。
通常は、経営理念やビジネスモデルの構築に、かなりの時間を要します。
というのも、経営者の思いはあるものの、それを言語化したり、ビジネスモデルという形に変えていくのが難しいためです。
避難所での弁当提供の経験や、南三陸の視察などの経験から、「復興に携わる人々に栄養とボリュームのある食事を提供する」という理念が、当初から形成されていたのです。
事業計画の具体化
事業計画では、解体事業者向けの早朝からの弁当提供を柱としました。
朝5時からの営業開始という判断は、地域のニーズを的確に捉えたものでした。
コンビニエンスストアの営業時間や営業日が制限される中、早朝から復興に向けて活動する作業員への食事提供は重要な役割を果たしています。
収支計画では、家賃負担がない利点を活かした売上規模や収支を想定。
復興ツアー受け入れなど、観光復興との連携も組み込んでいます。
また、マスコミは「すずキッチン」を紹介していますが、
再開できていない他の事業者への配慮から自分たちからSNS等での情報発信は行なっていません。
このような細やかな心遣いが、地域全体の復興において重要な意味を持つのではないでしょうか。
今後の課題
最終的な課題は、各経営者の本来の店舗再建との両立です。
3年弱の仮設店舗期間中に、どのように事業を発展させ、その後の展開を図るか。
この点について、1年ごとの見直しを提案し、柔軟な対応を考えているそうです。
「すずキッチン」の挑戦は、単なる事業再建を超えて、地域の食を支える新しいビジネスモデルを確立した好例といえるでしょう。
経営理念の明確化とビジネスモデルの綿密な設計が、この成功を支えています。
これからも、「すずキッチン」と中佐さんの挑戦は続きます。
懇親会
今月も定例セミナーの後、懇親会が開かれました。その一幕をご紹介いたします。
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