2024年10月のKCG定例セミナー講師は、株式会社金森合金の高下 裕子(こうげ ひろこ)さんです。
金森合金は1714年に創業し、砂型鋳造という伝統技術を守りながら、現代のニーズに応える革新的な取り組みを展開しています。
現在、同社は産業機械部品やロケット部品の製造を行い、地域の金属廃材を活用したリサイクル事業にも力を入れています。
このように、金森合金は過去の歴史と技術を今に生かしながら発展を続けています。
今回のセミナーでは、イノベーションをどのように仕掛けていったのかについてお話しいただきました。
過去の歴史と技術
金森合金の起源は1611年にさかのぼります。
加賀藩主前田利長によって、金森家祖先の金森弥右衛門を含む御鋳物師七人衆を招き高岡鋳物の礎を築きました。
江戸時代から続く砂型鋳造技術は、地域で不要になった金属を精錬し、新たな製品として再生させて発展していきました。
今、盛んに叫ばれている循環型ビジネスモデルとも言えるでしょう。
高岡に所在していた藩政期には、一点ものの製作が主流であり、梵鐘や調度品などが製造されていました。
そのころは藩から許可を得て仕事を行っていたこともありましたが、
明治時代には自由競争となったため、その制約がなくなり、金沢へ移転しました。
現在の事業展開
現在、金森合金では産業用機械部品の製造を主力事業としています。
約3センチから3メートル以上の幅広いサイズに対応し、特にロケット部品など特殊素材の製造も手がけています。
顧客のニーズに応じた柔軟な生産体制を整え、一品だけでなく中量生産にも対応しています。
また、金森合金は地域の金属廃材を活用したリサイクル事業も展開しています。
新聞印刷用アルミ版やホテルから排出されるアルミ缶などを再生し、新たな製品へと生まれ変わらせています。
特にハイアットホテルとの取り組みでは、年間10万本のアルミ缶を再生し、ホテル用テーブルウェアとして提供するプロジェクトが進行中です。
このような取り組みは環境への配慮だけでなく、地域経済への貢献にもつながっています。
ブランド「KAMAHACHI」の展開
2019年には「KAMAHACHI」というブランドを立ち上げ、伝統技術を活かした現代的な生活用品を展開しています。
このブランドでは、「針のない剣山」など、多彩な商品ラインナップが揃っています。
「針のない剣山」は銅イオンによる抗菌効果で花が167%長持ちすることから、多くの注目を集めています。
また、自宅で簡単に花を楽しむための商品としても人気です。
さらに、「KAMAHACHI」ブランドでは、美容業界とのコラボレーションも進めています。
美容師が使用するカラー剤やパーマ剤が入ったアルミチューブなど、新たな廃材リサイクルプロジェクトも始動中です。
デジタル化と効率的な運営
少人数で効率的な運営を実現するため、金森合金ではデジタル化にも力を入れています。
kintoneというクラウドベースの管理システムを導入し、得意先管理や素材管理、価格推移管理などを一元化しています。
このシステムによって情報が可視化され、業務効率が大幅に向上しました。
また、freeeというクラウド会計ソフトも導入しており、キャッシュフロー管理がリアルタイムで行えるようになっています。
freeeの導入サポートには、中小企業診断士の浅田さんが協力されているとのことです。
デジタル化によって業務プロセスが簡素化され、小規模ながらも競争力ある企業運営が実現されています。
このような取り組みは、中小企業でもデジタル化が可能であり、その効果も出ていることを示す好例となっています。
未来への挑戦と万博プロジェクト
2025年大阪・関西万博では、「能登半島地震」の災害廃材を活用したサインスタンド製作プロジェクトに参画します。
災害廃材という負のイメージを持つ素材を、新たな価値ある製品として再生する取り組みです。
このプロジェクトは地域社会への貢献だけでなく、日本全体へのメッセージともなるでしょう。
さらに、「PLUTO」とのコラボレーション商品など文化やアートとの融合も図っています。
このような取り組みは、砂型鋳造を知らなかった新しい顧客層との接点作りにもつながります。
伝統技術と現代的なデザインやコンテンツとのコラボレーションによって、新たな市場開拓にも挑戦しています。
まとめ
金森合金は、400年以上続く伝統技術を現代社会に活用するため、自社ブランドの立ち上げ、DX、外部とのコラボレーションなどを積極的に展開しています。
過去から現在へ受け継がれてきた技術と理念は、新しい時代にも通じる価値があります。
今後も金森合金がどのように進化していくか、その動向から目が離せません。
懇親会
今回も、セミナー後に講師を交えて懇親会が開催されました。
その一幕をご紹介いたします。
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